東京新聞・いいたい放談 「風立ちぬ」を見て (2013・9・11)

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「風立ちぬ」を見て  東京新聞 2013年9月11日(水) 朝刊 放送芸能面に掲載

宮崎駿監督が引退宣言をしたが、その最後の作品になるかもしれない 「風立ちぬ」を見た。

ユーラシア大陸のはしっこの、その先に浮かぶ小さな島国、日本とい う国で一九三〇年代に生きていた人間の存在感を感じた。同時に感動し たのは、その絵づくりの細部、つまりディテールである。

震災のシーンが圧巻なのだが、名もなき庶民がうごめき、見ている側は、その一人一人の人生を思ってしまうし、丁寧に描かれた畳の目地まで見入ってしまう。

この作品を完成させるためにスタッフはどれだけ仕事をしたことだろう。圧倒的なディテールに支えられながら、骨太のメッセージを差し出す。そのメッセージについては映画館で見て考えていただくとして、これだけの作品に携われたスタッフの方たちは幸福だな、と感じた。

映画は一瞬にして見る側の前を通り過ぎていく。当たり前のことだ。しかしそこには膨大な量の仕事が横たわっている。この映画の主人公である戦闘機の設計者、堀越二郎もまた仕事に打ち込んだ人であり、この映画のスタッフの方と通じるものがあるだろう。

その人の仕事が評価されるには時代との相性もあるはずだ。だとすれば時代とは何か、私達は時代とどう関われるのか、いろいろなことを考えさせられた。               (映像作家)

 

次回の掲載は、9月25日水曜日です。

どうぞお楽しみに!