東京新聞・言いたい放談 「美化してはいけない」 (2014・1・15)

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東京新聞 「言いたい放談」 2014年1月15日(水) 朝刊放送芸能面に 掲載
安倍首相が靖国神社に参拝したニュースをテレビで見て、思い出したことがある。
アメリカの核兵器工場を取材した時のことだ。ここで長崎に落とされた原爆のプルトニウムが抽出されたのだが、働いている人たちの子どもたちが通う高校のバスケットボールチームの名が「ボンバーズ」という。爆撃機という意味だ。
チームが試合でシュートを決めるたびに、チアガールがキノコ雲の模型を手にエールを送る。町には工場労働者がたむろするビアホールがあり、地ビールを出す。それをプルトニウムポーターズ(プルトニウムの運び屋)という。
原爆投下は正当だった、おかげで最小限の犠牲で済んだ、との見方がアメリカ国内では根強い。原爆を正当化する心理と、戦死した日本兵を英霊と呼ぶ心理はどこか通じたものがあるように思われる。
戦争が終わって七十年たっても、傷はいやされていない。命の収奪を美化するのは、その魂に祈りをささげることと相反する。
戦地では敵味方双方の命が奪われた。その痛みをいやす営みとは、武器をつくってもうける行為と対極にあるのは言うまでもない。
言葉と行動が相反することを自覚しない人間は信頼を失う。それが一国の首相であることが残念でならない。
(映像作家)

次回掲載は1月29日です。

どうぞお楽しみに。