東京新聞・言いたい放談 「本当の事は伝わりにくい」(2014・3・26)

メディア

photo1(1)

東京新聞「言いたい放談」2014年2月26日 朝刊放送芸能面に 掲載
本当の事は伝わりにくい

東北大震災と東京電力福島第一原発事故から三年経った。私のコラムも始まって1年。この間、福島はもちろん日本中に散らばった避難・移住をした人々を訪ねたり、ベラルーシにも出かけて行った。ずっと新作「小さき声のカノンー選択する人々」の製作に追われてきた。映画の姿がようやくこれから見えてこようとしている。そして、今、強く感じるのは現場で起きていることをありのままに本当の事を伝える営みがいかに難しいか、だ。本当のことは、本当のことだからこそとても伝わりにくい。

マスメディア、あるいは私のような小さなメディアでも何かしら分かり易さを求めてしまう傾向がある。しかし、現場は矛盾と不条理に充ち満ちている。人間の複雑さは一筋縄ではいかない。日常は目をそむけたくなるような醜悪な顔をしている訳ではない。しかし、この社会全体に放射能がしみ込んでいる。そこに生きる人々をどう伝えて行くのか、日々もんもんとしている。

どれだけ言葉を紡いでも語り尽くせないというのが本当だ。言い放った言葉がその瞬間から意味を変えていくこともある。穏やかな日常の一皮剥いたその下にある本質的な問題を掘り起こし、映像としてきちんと見えるようにしたい。今、私の映画は正念場だ。最後に1年間、おつきあいいただきありがとうございました!

(映像作家)

 
一年間連載してきた東京新聞「言いたい放談」は今回で最終回でした。

担当していただきました小田記者、浜口記者、ありがとうございました。

お読みいただいた読者のみなさま、本当にありがとうございました。